住み慣れた家でも、家族の成長や生活環境の変化に伴い「今の家をもっと広く、快適に暮らしたい」と思うことがあります。そんなときに検討するのが「増築」や「改築」です。
しかし、家の増築・改築は、単純にスペースを増やせば良いというものではありません。建築基準法や構造上の問題など、さまざまな制約があり、思い通りに工事ができない場合があります。せっかく計画を立てたのに「この家は増築できない」となってしまうと、時間が無駄になってしまいます。
そこでこの記事では、家の増築・改築における注意点や、増築できない家について詳しく解説していきます。増築・改築のメリットとデメリットについても紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

家の増築・改築の注意点は?
家の増築や改築を検討する際は「既存の建物の耐震性の確認」「建築確認申請の必要性」「固定資産税の増加」これらに注意する必要があります。
以下では、それぞれの注意点について解説します。
既存住宅の耐震性を確認しておく
増築や改築を行う前に、まず既存の建物の耐震性を確認することが大切です。
1981年5月31日以前に建てられた建物は、旧耐震基準で設計されているため、耐震性が不足している可能性があります。
耐震性が低い建物に増築を行うと、建物全体の耐震バランスが崩れ、地震時の倒壊リスクが高まる恐れがあります。そのため、増築前には専門家による耐震診断を受け、必要に応じて耐震補強工事を行うことが推奨されています。
建築確認申請が必要になる場合がある
増築や改築を行う際、建築確認申請が必要となるケースがあります。
建築確認申請とは、建物が建築基準法や各種条例に適合しているかを確認するための手続きのことです。この申請を怠ると、工事の停止や罰金などのリスクが発生します。申請が必要となるのは、増築部分が10㎡以上となる場合や、防火地域または準防火地域で増築する場合です。
また、増築により床面積が増加した場合、工事完了後1カ月以内に「建物表題変更登記」を行うことが義務付けられています。これらの手続きは専門的な知識が必要となるため、リフォーム会社や施工会社に依頼するのが一般的です。
固定資産税が増加する
増築を行うと、建物の床面積も増加するため、固定資産税が増加します。固定資産税は、土地や建物などの固定資産に課される税金であり、床面積や評価額に基づいて算出されます。例えば、一部屋分の増築を行った際の固定資産税の増加額は、数万円程度が目安とされています。
固定資産税は、資産を所有している限り毎年発生するため、長期的な経済的負担を考慮する必要があります。増築や改築を検討する際は、これらのランニングコストも含めて総合的に判断するようにしましょう。
増築できない家とはどんな家?
家の増築は「建ぺい率および容積率が上限に達している」「再建築不可物件に該当している」「家が鉄筋コンクリート造」これらに当てはまると、増築が難しい場合が多いです。
建ぺい率および容積率が上限に達している
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合を指し、容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合を指します。
これらの数値は、都市計画法や建築基準法により定められており、地域や用途地域によって上限が異なります。例えば、建ぺい率60%・容積率200%と指定されている地域で敷地面積が100㎡の場合、建築面積は最大60㎡・延べ床面積は最大200㎡まで許可されます。
既にこれらの上限に達している場合、増築により建ぺい率や容積率を超過することは法律で禁止されているため、増築が不可能となります。
再建築不可物件に該当している
再建築不可物件とは、現在の建物を取り壊した後、新たに建築することが法律上許可されていない物件のことを指します。
再建築不可物件に当てはまる家は、敷地が建築基準法で定められた道路に2メートル以上接していない、または接している道路の幅員が4メートル未満である場合が挙げられます。
このような家は建築確認申請が下りず、新たな建物の建築や大規模な増改築が制限されます。そのため、再建築不可物件に該当する家は、増築が難しいとされています。
家が鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造の建物は、耐久性や耐火性に優れていますが、増築や改築を行う際には特有の課題があります。鉄筋コンクリート造の建物は構造上、壁や床が一体となって強度を保っているため、部分的な解体や変更が難しく、増築を行う際には建物全体の補強が必要となる場合があります。
そのため、鉄筋コンクリート造の家を増築する際は、専門的な知識と技術を持つ建築士や施工業者に相談し、慎重に計画を進めるようにしましょう。
家の増築・改築のメリット・デメリット
家の増改築は、住環境の向上や資産価値の増加を期待できる一方で、さまざまなメリットとデメリットが存在しています。以下に、メリット・デメリットをまとめました。
メリット
・新築への建て替えよりもコストを抑えられる
・建て替えよりも工期が短く済む
・既存住宅の不満点を解消できる
・住居スペースを増やすことができる
デメリット
・固定資産税が増加してしまう
・建築確認申請によって着工までに時間がかかる場合がある
・耐震性のバランスが取れていないと倒壊のリスクがある

まとめ
この記事では、家の増築・改築における注意点や、増築できない家について解説してきました。
家の増築や改築を行う際には「既存住宅の耐震性の確認」「建築確認申請の有無」「固定資産税の増加」などに注意が必要です。
「建ぺい率および容積率が上限に達している」「再建築不可物件に該当している」「家が鉄筋コンクリート造」これらに当てはまる家は、増築が難しいとされています。
増改築には、工期やコストを抑えながら住環境を改善できるメリットがある一方で、固定資産税の増加や耐震バランスの問題などのデメリットも考慮する必要があります。
