「自宅で楽器の演奏を楽しみたい…」「動画配信をしてみたい…」このように、音量を気にせず快適に過ごせる空間を作りたい方にとって、防音室は魅力的な選択肢です。そんな防音室を自宅に増築する場合は、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?
実は、増築の規模や防音性能のレベルによって費用は大きく変動し、数十万円以上の差になるケースもあります。さらに、増築リフォームの際には事前に把握しておくべき注意点があります。
この記事では、防音室の増築にかかる費用の相場や、リフォームの際の注意点を詳しく解説していきます。防音室を作る上で知っておきたい「吸音」と「遮音」についても解説していますので、ぜひ最後まで読んでみてください!
防音室の増築費用の相場はどれくらい?
防音室の増築費用は、防音室の広さや求める防音性能、使用する材料に施工方法などによって大きく異なります。一般的な相場としては、1畳あたり40万円~50万円程度が目安とされています。4畳の防音室を設ける場合は、総額で150~200万円程度の費用が必要になるでしょう。
防音性能(遮音性能)は「Dr値」という数値で表されます。Dr-40、Dr-50、Dr-60などがあり、数値が大きいほど防音性能が高いことを示します。
例えば、100db(電車が通過するときのガード下)相当の音が防音室で発せられているとき、防音室の外や隣室では40db(図書館内)程度の音量に聞こえる場合、防音室の防音性能は、100ー40=60「Dr-60」の防音性能となります。
知っておきたい吸音と遮音について
防音室を作る上で「吸音」と「遮音」は重要な要素です。効果的な防音環境を手に入れるためには、吸音と遮音の両方をバランスよく取り入れることが必要になります。
吸音とは
吸音とは、室内から発せられる音を吸収して、反射や残響を抑えることを指します。音は壁や天井などにぶつかると反射し、残響音となって室内に響き渡ります。この残響音が大きすぎると音が聞き取りにくく、不快に感じてしまいます。
吸音材は、音を外に漏らさないように吸収するのと同時に、音のエネルギーを熱エネルギーに変換することで、音の反射も減少させています。吸音材として一般的に使用されるのは、グラスウールやウレタンフォームなどです。これらの素材は、内部に無数の微細な空気の隙間を持ち、音が入り込むことでエネルギーを効果的に吸収します。
防音室において吸音を適切に施す理由は、音漏れだけでなく、クリアな音質を表現するためでもあります。
遮音とは
遮音とは、空気中に伝わる音を遮断して、音が外部に漏れ出すことや外部の音が侵入することを防ぐことを指します。遮音の目的は、音を反射させて通過させないことです。
一般的に質量の大きい材料ほど遮音性能が高いとされています。代表的な素材としては、コンクリートや石膏ボードなどが挙げられます。コンクリートは遮音性能が優秀ですが、コストの側面から石膏ボードを採用される方が多いです。
これらの素材を、防音室の壁・床・天井に施すことで、外部への音漏れや外部からの侵入を効果的に防ぐことが可能です。
防音室のリフォームする際の注意点は?
防音室の増築リフォームを検討する際には、快適かつ効果的な防音室にするために、以下のポイントを押さえることが大切です。
目的を明確にする
まずは、防音室をどのような目的で使用するのか明確にしましょう。これは、楽器の演奏・映画鑑賞・動画配信など、用途によって必要な防音性能や設計が異なるためです。例えば、ドラムのような大音量の楽器を演奏する場合、高い遮音性能と防振対策(物体の振動音:洗濯機の使用中の振動など)が求められます。一方、映画鑑賞用であれば、外部の騒音を遮断し、室内の音響を整えることが主な目的となります。目的を明確にすることで、適切な防音対策や予算の設定が可能になります。
空調設備を整える
防音室は音漏れを防ぐために、気密性や断熱性が高くなっています。そのため、空調設備が必要不可欠になります。熱や湿気がこもりやすい防音室、特に夏場は室温が高くなりやすく快適に過ごせなくなるので、空気清浄機やエアコンなどを設置しましょう。
天井の高さを考える
防音室は壁や天井に防音材を追加するため、部屋の内寸が小さくなります。室内の広さは使用目的によってそれぞれ異なりますが、天井の高さは、少なくとも2.4mは確保した方が良いとされています。これは、ピアノや弦楽器などによっては、天井の高さが音の反響に影響し、聞こえ方が変わってくるためです。
リフォーム前に必要な天井高を確保できるか確認し、場合によっては設計の見直しや部屋の再選択を検討しましょう。
床の強度を考える
床の強度を考えることも大事です。防音室に用いられる素材は「遮音材」と言い、空気中に伝わる音を遮断する効果があります。この遮音材は、質量が大きいほど遮音効果が高いとされるため、防音効果の高い防音室は非常に重くなります。
このため、2階以上のフロアに防音室を増築する場合は、床の耐荷重を業者に確認してもらう必要があるでしょう。木造住宅などでは、構造上の制約から追加の補強工事が必要になることもあります。
規約を確認する(マンション)
マンションで防音室の増築を行いたい場合は、マンションの管理規約や管理組合のルールを事前に確認することが必要不可欠です。窓などは共用部分とみなされ、勝手に変更できない場合があります。また、防音室の増築工事による振動や騒音が、近隣住民の生活に影響を及ぼしますので、事前に説明を行って了承を得ることが望ましいです。
まとめ
今回は、防音室の増築にかかる費用の相場や、リフォームの際の注意点を解説してきました。
防音室の増築費用は、広さや防音性能、遮音材などによって大きく異なりますが、1畳あたり40万円~50万円が相場となっています。例として、4畳の防音室であれば,
150万円~200万円程度が目安となります。防音性能はDr値で表され、数値が大きいほど高性能になります。
リフォームの際は、目的を明確にする・空調設備を整える・天井の高さを考える・床の強度を考える・マンションの場合は規約を確認する、これらのポイントを事前に抑えておきましょう。